モロー美術館 ~ユピテルとセメレ~

画像“モロー美術館には未完成の作品が多い” と書きましたが、もちろん完成品がないわけではありません(^^)

モローは自分の作品が分散し紛失することを恐れていたため、依頼品やサロン(官展)に出品するための作品以外の大部分を手元に残していました。

手元に残すものは少しずつ手を加えていたので未完成になってしまったものの、公にする作品たちは驚くほど細かく綿密に仕上げられています。

モロー美術館に展示されている完成品の中で一際目を奪われるのがコチラ。

「ユピテルとセメレ」
1895年製作、
高さ:212cm 幅:118cm 油彩



画像ユピテルというのはローマ神話の神々の長:ジュピター。
セメレというのは人間でありながらユピテルに愛された女性の名前。

 これは絵画上部を写したもの。
位置が高すぎてうまく写せなかったけど(T_T)

目を見開いた無表情の男性がユピテルで、彼の膝上で倒れこんでいる白肌の女性がセメレ。
ユピテルは女神やニンフのみならず人間をも愛する多情な神様で、
セメレもユピテルに愛された一人。
英雄色を好むというけれど・・・(^^;)

神の威光は人間には刺激が強すぎる(?)せいか、ユピテルはいつも
人間の姿となってセメレの元を訪れていました。
セメレはユピテルの真の姿を見たいと望み、
本来の神の姿となって現れたユピテルの威光に耐えられず
彼の放つ雷光に焼き尽くされ死んでしまう・・・という神話がテーマ。


画像「ユピテルとセメレ」はモローが晩年に描いたもののせいか、モローが理想とした装飾的・幻想的で異国的な雰囲気が最も強く感じられる作品。

相当思い入れの強かった作品のようで依頼主に渡す期日がきたときには
「あと2ヶ月、手元に置いておきたかった」 という言葉を残しています。

“これ以上この作品のどこに手を加えるつもりだったの!?”
というのが正直な感想だけれど、
実はモローはこの作品に情熱を傾けすぎるあまり
描いている途中でキャンバスを何度か拡張させているのだとか。
この絵が不自然に縦長なのも拡張された結果。よく観ると継ぎ目が見えるのが興味深い!(^^)


画像どこか一部分だけ眺めても全く隙のない絵なので、いくつかアップで写してきた画像をご紹介♪
今回写真の枚数がやたらと多い記事でごめんなさい・・・(^^;)

管理人がこの絵の中で最も驚いたのが上↑の写真。
ユピテルが腰掛けている台座に描かれた、獅子の浮き彫りと宝石きらめく布の数々。遠目で見ると本当に輝いて見えるのが素敵。

そして、たくさんの人物が描きこまれている中で最も惹かれるのが
← コチラ。
中央左端で物思わし気にうつむく、極彩色の翼を持った天使(?)


画像
中央右端にはもう一人極彩色の翼の天使がいて、どちらもひどく悲しげな様子。

キャンバス下部には本来のテーマ:ユピテルとセメレの話には直接関係がないたくさんの異形の生き物が描かれていて、じっくり眺めれば眺めるほど謎めいてくる作品。モローの脳内世界を覗き込んでしまったような印象。

この絵の前にはベンチが置かれていて、大抵の見学者がそこでしばしこの絵の内容について黙考するようです。
管理人も毎回しばらくこの絵の前に釘付けになってしまう・・・(^^;)




画像館内には未完成の “空白の美” を感じさせる作品が多いせいか、この作品は濃密・多彩で異色な雰囲気。

美術館が開館するにあたって寄贈されたこの作品は、モロー晩年の集大成ともいえる貴重な一枚。

モロー美術館を訪れた際には見逃せない重要な作品だと思います!(^^*)

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